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その視線の先


「おい小十郎・・・昨日甲斐の虎んとこの幸村にあったぜ!」

唐突な言葉に思わず絶句していると政宗様は楽しげに笑う。

「折角だからいっちょ勝負してみようぜって話になったんだけどよ・・・
虎のオッサンが間に入っちまって残念ながらダメになっちまった。」

全くこの人は・・・何回言ったら理解するのだろう。

「政宗様・・・あれ程勝手をされませぬ様言っているではありませんか。」

「うるせーなあ・・・小十郎。
あんまうるセ~ことばっか言ってっとそのうちハゲちまうぜ。」

イライラした・・・・
勝手気ままなのはいつもの事だ・・・
だが自分のいぬ間に勝手に出歩き更には敵将と遭遇する始末。
その上真田の名前まで出され自分の感情が制御できなくなった。

「オッサンさえいなきゃよ・・・幸村の野郎とちっとは遊べたのにな。」

「政宗様!!」

苛立ちをぶつける様に叫び、
力の限り腕を掴んだ俺に驚いたように政宗様が振り返る。

「痛てえよ!馬鹿力でつかむんじゃねぇ・・・おい・・・何イラついてやがる。」

真っ直ぐに射抜かれた視線を受け止める事が出来ずに思わず目を逸らす。

「何だよ・・・言いてえ事があるんなら言えっていつも言ってんだろうが・・・
お前は何でもかんでも溜めすぎなんだよ。だからいつかハゲるって言ってんだろ!」

言える訳が無い。
今の自分の発言が心から政宗様の心配だけであったならば
俺は真っ直ぐにこの人を叱り付けることが出来る。
だが、今の俺は違う・・・だからこの瞳を見返すことが出来ない。

解かっているのだ・・・
これは・・・嫉妬なのだと・・・

いつからだろう・・・
政宗様の口から出る名前に悋気を覚えるようになったのは・・・
最初は好敵手を見つけた純粋な喜びだと思っていた。
ところが政宗様の口からはその名前が頻繁に出るようになった。
何よりその名を語る時だけ普段は見せない様な笑顔を見せた。
胸の奥がキリキリと痛んだ。
どんな物にも捕らわれた事のなかった政宗様が今・・・
その名に捕らわれている事に憤りを覚えた。

「おい・・・小十郎!てめぇいい加減にしやがれ・・・
何でそんなに最近機嫌が悪いんだよ。」

俺を睨みつけてくる瞳に全てを見透かされそうで思わず目を伏せる。
するとふぅーっと溜め息を吐き肩を竦めた政宗様は
その場にごろりと大の字に横たわる。

「なあ・・・小十郎・・・」

天井を見上げたままポツリと呟く声が寂しげで
俺は思わず政宗様を振り返った。
その瞳は天井の何か一点を見据えたままこちらを振り向く事は無かったけれど・・・

「何ですか・・・政宗様。」

政宗様の心の中が知りたかった・・・
しかしそんな事を思う自分が許せなくもあった。

「お前・・最近俺の目を見なくなったよな・・・
心ん中に何か溜め込んで・・・
溜めばっかり吐いてやがる。
俺の・・・所為なんだろうけどよ・・・
何が気にくわねぇのかわからねえよ・・・」

とつとつと語られる言葉は俺に喜びを与えた。
少しでも自分を見ていてくれるのだという歪んだ喜び。

「俺はよ・・・いつだってムチャ出来るのは
必ずお前が背中を守っていてくれるからだと思ってる。
なのにそのお前が俺を見てくれねえんじゃあよ・・・
俺は前を向いて進めなくなっちまうじゃねーか・・・」

「いつだって・・・後におりますよ・・・」

そっと声をかけると天井を見つめていた瞳が俺の目を捉える。

「お前は・・・いつも俺の傍にいろ・・そう約束しただろうが・・・」

言葉に滲む寂しさを見出し俺は満足する。

「この片倉小十郎・・・政宗様との約束を違えたり致しません。
俺はいつだって政宗様のお傍におります。
貴方の右目となって常にお守り致します。」

「じゃあ何をイラついてるんだか教えろよ・・・
お前がイライラしてっとこの俺でさえどうしたらいいか分らなくなるんだ。
部下の奴らの身にもなれよ。」

再び天井に戻した瞳の中にこの人なりの甘えを見た。

「部下の為に俺の機嫌を直したいんですか?」

我ながら歪んだ性格だ・・・
もっと素直になれば良いと思うのに口をつくのはそんな言葉ばかりだ。

「意地が悪い事言うなよ。
お前・・・最近一段と良い性格になってきたんじゃねえのか?」

子供のように口を尖らせ小さな声で呟く様子に愛おしさを感じる。

「俺は・・・この世に何一つ怖いものなんて無いと思ってた。
幸村や甲斐のオッサンだって強いとは思うけど怖くはねぇ。
魔王でもそうだ。
いつかあいつを倒して天下を統一してやるくれえの気持ちはある。
でもな・・・唯一あったんだ・・・
怖いもの・・・」

俺はそっと腕を伸ばし政宗様の頬に触れる。
愛しい人の視線が自分に戻るように・・・

横たわったままの姿勢で俺の指をさせるがまま一度目を閉じた政宗様の視線は
次に目を開いた時には望み通り真っ直ぐにこちらを見ていた。

「お前・・・お前を失うのだけは・・・こえーよ・・・」

ポツリと呟く政宗様が愛おしくて身体を倒し抱き込んだ。

「俺は・・・貴方を置いて逝ったりしません。この命尽きる時は貴方と共に・・・」

「その言葉・・・違えるんじゃねえぞ・・・俺は背中がいつもがら空きだからな。」

この人の傍にいられる幸せ・・・
この戦乱の世
いつ果てるとも分らないこの身でも常に戦い続ける。
それは・・・
ただ一人・・・この愛しい人の為。








初めて描いたコマサ・・・
ちょっとシリアスにしようと思っていたのですが無理でした(笑)