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この人がとても愛しいと思う。

半歩前を歩く 端正な横顔をそっと見上げる。
「愛しい」という感情はどこから来るのだろう。

今まで持ったことのない新しい思いだと啓太はふと思いあたる。

いい人、好きな人、嫌な人、素敵な人、
人をを表す感情は色々あるけれど、こんなに愛おしい人は初めてだ。

14cmある身長差。足の長さの差はさらにあるだろう。
それども俺があわてて追いかけた事など1度もない。
無意識に合わせてくれているからだろう。

そんな思いにとらわれていると、苦笑混じりの声が降ってくる。

「そんな風に見詰めないで下さい。僕の忍耐力をためしてるんですか?」

おだやかな低めの声。紫の瞳が正面から俺をとらえる。

「え?あっすみません。」

頬が赤くなるのが自分でわかる。
ぼうっと見惚れていたなんて…

「伊藤君、夕立がきそうですよ。少し急ぎましょう。」

確かにさっきの晴天とはうって変わって、暗い雲が立ち込めている。
差し出された左手に自分の右手を乗せて、数歩歩き出したとたん、大粒の雨が降ってきた。

「わぁ。降ってきましたよ。早く何処かで雨宿りしましょう。」

走り出し大きめの木の下へ逃げ込む。
とたんに大地を揺るがすような雷の音。

「うわっ!」

思わず耳を塞いで驚きの声を上げた俺に、彼が優しく問いかける。

「伊藤君は雷が苦手ですか?」

「別に苦手っていう程ではないですけど、あまり好きな人はいないんじゃないですか?」

聞き返す俺に

「そうですか?僕は結構好きなんですけどね。キレイじゃありませんか。」

七条さんらしい。と思わず納得する。

「建物の中から見る分には確かにキレイかもしれませんけど…でも今はちょっと…」

答えた瞬間に彼の後ろにチラリと黒い羽根が見えた気がした。
こういう時は要注意だ。

すると彼はずぶ濡れになるのも構わず道の中央にへ歩み出る。

「七条さん。濡れますよ。」

思わず声をかける。

「伊藤君こそ。そんな大きな木の下では雷が落ちるかも知れませんよ。
早くこちらへ来て下さい。」

そう言われて思わず俺は、彼の広げる腕の中へ飛び込んでしまっていた。
すると、彼は着ていた上着を脱ぎ、俺の頭の上へ掛けてくれる。

「そんな。七条さんがカゼをひきます。」

「大丈夫ですよ。僕はそんなにヤワじゃありません。
それよりも伊藤君が雷にあたってしまう方がイヤですから。
とりあえず寮まで歩きましょう。」

うながされた左側から整った顔を見上げる。

俺は彼のとなりを歩く時、気が付くと左側にいる。
最初は車道側ではない方に彼が意識的にしてくれていたのだけど今は自主的に左側にいる。

凛とした端正な顔にアンバランスともいえる泣きぼくろ
とても色っぽくみえて俺はとてもこの横顔が好きだ。
そんな事をぼんやり考えているとまた苦笑が落ちてくる。

「今日は伊藤君に見つめられっぱなしです。僕の理性も限界ですよ。」

イタズラっぽく言われてまた顔に朱が散る。
チュッと頬にキスを落とされさらにユデダコ状態だ。
寮までの道はふわふわしていてよく覚えていない。






「お前たちもか?よく濡れたな。」

寮の入り口で篠宮さんに声をかけられた。

「どうして雨宿りくらいしてこないんだ。」

言いながら大きな袋とバスタオルを渡された。

「いえ、しようとは思ったんですけどあんまり雷がひどかったので大きな木の下は危ないと
七条さんが教えてくれたものですから。」

俺の答えにちょっと驚いた顔をした篠宮さんは溜息を落としながら七条さんに向き直る。

「七条、伊藤をからかうのもいい加減にしろ。
学園と寮には避雷針がついていて他に落ちないことぐらいお前なら知っているだろう。」

「おや?そうでしたね。伊藤君が心配でうっかり失念していましたよ。」

しれっと答える彼にやはりさっきの羽根としっぽは見間違えではなかったと確信する。

「まあいい。そのまま大浴場へ行け!今日はとりあえずバスタオル1枚で部屋まで戻っていい。
荷物や服は袋に入れて寮内を濡らすなよ。」

と言い渡された。

「さすがは篠宮さんですね。皆の帰りをああやって待ってるんでしょうか?」

「そうですね。彼の性格ですと夕立ちがやむまではあそこにいるのでしょうね。」

たあいのない話をしながら大浴場を後にして部屋に向かおうとすると七条さんに呼び止められる。

「伊藤君、僕の部屋に寄っていっていただけませんか?」

思わず戸惑い見返す。

「あの・・・でもバスタオル1枚ですし着替えたら伺いますから。」

「できたらそのままがいいんです。さっきも言いましたが僕は我慢の限界なんですよ。」

直裁な誘いに顔が赤らむ。

この人が愛しいと思う。
だからこそ自分が出来る事ならば出来るだけ叶えてあげたいと思う。

「わかりました。」

思わず小さな声になってしまったけれどはっきりと答える。
その瞬間紫の瞳がこの上なく幸せそうに細められた。





 FIN

臣さん大浴場で欲情ですか?皆にばれないようにおねがいしますよ。