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雪が嫌いだった。
降り出した雪は周囲の音を奪い僕の孤独を浮き立たせた。
冬が嫌いだった。
寒いのは嫌いではない。だけど冬は人恋しくなるから。
祖父母が他界してから北陸の長い冬は音を奪い、僕の心を凍てつかせた。
だから僕は・・・
真っ白な雪を踏みにじるのが好きだった・・・



「七条さん。見て下さい。雪ですよ!」

華やかな街のイルミネーションに彩られて空から舞い落ちる色とりどりの雪。
初雪がクリスマス・イヴだなんて。

「伊藤君はいつもラッキーですね。」

「本当です。俺、自分の運が良い事が今日ほど嬉しい事って無いです。」

僕を見上げる彼の空色の瞳には街のイルミネーションも敵わない。

「こんなに綺麗な景色を七条さんと見れるなんて。
ほら、見て下さい。雪もキラキラしてとっても綺麗です。」

何よりも綺麗なのは君なのだと何度言ったら彼には伝わるのだろう。

「ふふっ伊藤君も綺麗ですよ。」

都会の雪は重い。
彼のニットの帽子の上に降り積もる大きな雪を軽く払いながら彼の額に軽くバードキス。

「ちょっ・・・七条さん。ここ街中ですよ!」

寒さと恥ずかしさで頬を朱らめる恋人が愛おしくて仕方が無い。

「大丈夫です。こんな時は誰も僕達の事なんか見ていませんよ。
ほら、皆イルミネーションと雪に見惚れていますから。」

行き交う恋人達は皆嬉しそうに腕を組み、プレゼントの袋を下げている。
どの顔も嬉しそうに微笑んで見詰め合っている。
そして僕も見つめあう。最愛の恋人と・・・

「どうしたんですか?七条さん。」

「いいえ。僕は本当に君の事が好きだなぁと、再認識していた所です。」

僕の言葉に目の前の恋人はとても綺麗に微笑んだ。

「俺も・・・大好きです。七条さん。」

そして彼は少し背伸びをして僕の頭の上の雪を払ってくれる。
どうせ背伸びをするのならキスしてくれればいいのに。

「雪が七条さんの髪の色と合ってて凄く綺麗です。
・・・でもちょっと寒そうに見えちゃいました。」

そういいながら彼は僕の頬にキスをする。

「い・・とう君。」

「へへっ・・・ご・・めんなさい。つい・・」

かぁっと赤くなりながら彼はふいっと歩き出す。
僕は一瞬呆然とした後慌てて彼を追った。

「待ってください。伊藤君。」

彼へのプレゼントと彼からのプレゼント。
そしてこれから2人で食べるケーキ。
幸せのいっぱい詰まった紙袋をつぶさないように気をつけながら後ろから彼を抱きしめる。
彼の肩口に顔を埋めると彼のしているカシミヤのマフラーが柔らかく僕を包んだ。

「とても暖かいです。伊藤君。君からのキスは最高のプレゼントですよ。」

腕の中に彼を抱き込み僕は空を仰ぐ。
天から舞い降りてくる白い雪は羽根のようにそっと僕達に降り積もる。
まるで僕達2人を祝福しているように・・・

「だって・・・俺・・・どうしても今七条さんにキスしたくなったんです。」

僕の腕にそっと手を重ねて彼は呟くように囁く。

「僕も・・・君にキスして欲しかった。
伊藤君、君はいつも僕に優しさと暖かさを分けてくれる。・・・愛してます。」

「お・・れもです。ずっと一緒にいてくれますか?」

いつも君は惜しみなく僕に与えてくれるから・・・
その優しさ・・・暖かさ・・・
そして天使のような純粋さ。
僕の心を溶かしてしまう暖かさを感じながら、心から君に伝える。

「ずっと・・・ずっと一緒にいます。
何があっても君から離れません。
君もずっと一緒にいて下さい。」

言葉に出した途端何故か瞳から涙が溢れた。
君にこの顔を見られなくて良かった。
嬉しくて涙が出るという事を僕は初めて理解した。

「七条さん。メリークリスマス。
俺・・・今年のこの雪を一生忘れません。あなたと出会えて良かったです。」

これ以上僕を嬉しくさせないで下さい。
抑え切れなくなってしまう。

「ぼ・・くも君に出会えて良かったです。
この雪を一生忘れません。
メリークリスマス。」


白く白く降り積もっていく雪。
頬に、頭に、落ちてくる大嫌いだった雪。
重ねていた手を外して君が両手でそっと受け止める。
一瞬にしてあとかたも無く消えていくその儚さを・・・
今はとても愛おしいと思う。
君といれば大嫌いだった雪も愛おしい。
君といれば大嫌いだった冬も暖かい。
君といれば・・・
君といれば・・・


真っ白な雪に2人で足跡をつけるのも悪くない。



・・・愛していますよ。伊藤君。










 FIN


シェリー様に捧げます。
甘々に仕上げてみましたが如何なものでしょうか?
臣さん視点のモノローグ風です。
よろしかったら貰ってやって下さい。