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確かにその日俺は浮かれていたんだ。


だからいつもだったら多分しなかっただろうその行動を大した考えも無いまましてしまった。
だけどまさかこんな大事件になるなんてその時の俺はこれっぽっちも考えていなかった。
むしろ良いことをした。くらいに思っていたんだ。







12月の3週目の日曜日、俺は珍しく和希と街へ出掛けた。
それと言うのも七条さんがこれまた珍しく会計の仕事が溜まってしまって時間があけられないと言うので
和希に付き合って貰って買い物に行くことにしたんだ。
俺としても丁度良いタイミングだった。
クリスマスプレゼントを買いに行こうと思っていたからだ。
折角だから当日に渡して喜んで貰いたいし・・
そりゃあ一緒に買いに行って選ぶのも楽しいけれど俺が考えて買ってあげたい。と思ったんだ。

朝から良く晴れていてとても気もちの良い日だった。
和希が手芸屋へ行くと言うので(さすがに一緒に入るのは抵抗があって)
1時間後にファーストフード店で待ち合わせにした。

何にしよう、と考えながらデパートの紳士のフロアをうろうろした。
暫く歩くとあったかそうなマフラーを見つけた。
手にとって見ると凄く柔らかくて気持ちが良い。これカシミヤだ。
うわあこれにしようかな?何色が似合うかな?コートはグレーだったよな。
シルバーの髪にアメジストの瞳を思い浮かべながらカラシ色とモスグリーンの2つに絞り込んだ。

う〜んと唸りながら2つを手に取ってみる。
七条さん無彩色が多いからな。明るいのも似合うかも・・・

「プレゼントですか?」

いつの間に横にいたんだろう。にこっと笑って店員さんが話しかけて来た。

「あっええ、そうです。」

ちょっと驚きながら答えるとその店員さんは俺からマフラーを受け取って2本をそれぞれ両肩に掛ける。
確かに目の前で見るだけよりも印象が分かり易い。

「お幾つくらいの方かしら?お父様ですか?」

「あっいえ、先輩です。何色がいいか迷っちゃって・・・」

そこまで言ってから俺はマフラーの値札を見ていないことに気付いた。
しまった。結構高いんだろうな。いくら位するんだろう。

「あら、じゃあお若い方なんですね。外見はどんな感じかしら?背とかは?」

「背は高いです。180cm以上ありますから。っとその前にそれっていくら位ですか?俺値段も見てなくって。」

恐る恐る聞いてみる。今日は買い物をする気で来たから少しは持ってるけど・・・

「今セール中ですのでここから30%OFFになります。
1万円ですから消費税込みで7350円になります。」

わっ良かった。予算内だ。

「あっそれなら大丈夫です。
あの先輩ってハーフで髪がシルバーで目が紫なんです。
どっちの色がいいと思いますか?」

ここはプロに任せてしまおうと思って聞いてみる。

「まあ。ハーフで髪が銀で目が紫、180以上なんて素敵ね。
是非お会いしてみたいですね。
そうね・・・本当は同系色の紫とか素敵なんでしょうけど男性はあまりお好みの色では無いですものね。
マフラーは高い位置に目線が行きますからモスグリーンだと締まった感じにカラシ色は華やかな感じになりますよ。」

頭の中にイメージした七条さんに色を当てはめてみる。
でもやっぱり締まった感じの方が似合いそうな気がする。

「じゃあモスグリーンの方を下さい。」

「かしこまりました。プレゼント用にラッピングいたしましょうか?」

カラシ色の方を棚に戻しながら聞いてくる店員さんに俺は勢い良くお願いします。と言った。


キレイにラッピングして貰ったマフラーを持って、今度は一緒にいらしてくださいね。
と見送られて少しいい気分になりながら俺はデパート内をうろうろしていた。
和希との待ち合わせの時間にはまだあったし、外に出るのも寒そうだ。





そんな時後ろからおずおずと声をかけられた。

「あの・・・伊藤さん?」

こんな所で名前を呼ばれる知り合いはいないはずなのに・・・
振り向くと女の子が立っていた。
頭の中の記憶をフル動員してみたけど知らない娘だと思う。

「えっ俺ですか?」

彼女の視線が確実に自分に向かっていることを確認しながら聞く。

「あの・・すみません・・突然。」

真っ赤な顔をした彼女は口ごもって下を向いている。

「すみません。俺貴方のこと覚えてないんですけど・・」

「いえっあの、初めてお会いします。あの・・ずうずうしいんですけどお願いがあって。」

消え入りそうな声の彼女の言葉を必死で拾う。

「え?何でしょう。俺に出来ることなら。」

なんだろう。そもそもなんでこの娘俺の名前知ってるんだろう。

「あの・・し・ちじょうさんが貴方のこと伊藤君って呼んでらっしゃったから。違ってたらごめんなさい。」

「なんだ、七条さんのお知り合いだったんですね。
びっくりしましたよ。大丈夫です。俺、伊藤啓太って言います。間違ってませんよ。」

肩の力が抜ける。

「ち・・がうんです。お知り合いでもないんです。
2ヶ月くらい前お二人をお見かけして・・お名前もお互いが呼び合ってみえたのを聞いたくらいで・・
でも・・あの・・どうしてもしちじょうさんの事が気になって・・ごめんなさい!後をつけちゃったんです。」

ドキッとした。
七条さんは街中では決して手を繋いだりキスをしたりはしないけど
(俺が嫌がるからだけど)ちょっと人通りがなくなると手をつなぎたがったりする。
もしかしてそれを見られたりした?俺の心配をよそに彼女は話を続ける。

「それでベルリバティ行きのバスに乗られたんで
ああBL学園の方じゃあ連絡を取るのも無理だとあきらめていたんですけど・・・
それから2.3回また街でお見かけして・・それならと思って毎週うろうろしていたんです。
ひょっとしてクリスマス前だからお買い物にみえるんじゃないかと今日も探してたんですけど・・・
今日はお1人なんですね。」

なんだ七条さんを街で見かけて一目ぼれしたって事なんだ。
確かに目を惹く人だもんな
背高いし、格好いいし・・・

「すみません。今日は別の連れと一緒なんです。七条さん今日は忙しいみたいで。」

何で俺が謝らなくちゃいけないのか解らないけどなんとなくそう言っていた。
彼女が余りに必死だったせいだろうか。

「あっいいんです。そんな・・ただ・・あの・・1つお願いがあって・・」

「何ですか?」

そういえば最初にそんな事を言っていたなと思って聞いてみる。

「あの・・X'mas Presentと手紙を渡していただけませんか?」

勢い込んで言ってくる彼女に少々引き気味になってしまう。

俺は少し考える。やっぱり無理だろうな。

「すみません。
前に七条さんはそういう類の物は全てお断りしているって言っていたので
俺が預かっていくと多分怒られちゃいます。」

「そう・・・ですか・・・あのっじゃあ手紙だけでもダメですか?
別に私、彼と付き合えるとかそんな事考えてないです。
ただ自分の気持ちを解ってもらいたいんです。
お願いします。本当に渡していただくだけでいいんです。
別に無理なら返事も無くても構わないし・・・無理・・ですか?」

あまりの必死さにう〜んと考えてしまう。だって俺は今七条さんと付き合っている。
もちろん彼女はそんな事知らないだろうけど、これって所謂ライバルってヤツだよな。
七条さんが見も知らない娘に心を移してしまうことはもちろん無いとは解っているけど心情的にはかなり複雑だ。
確かに七条さんが格好いい、素敵だ。と言われるのは俺にとっても嬉しいことだし同意も出来る。
でも好きだといわれるのは嬉しくない。
七条さんを好きでいるのは俺1人でいいんだ。なんて傲慢な自分。

返事も無くてもいいという純粋に自分の気持ちを伝えたい彼女。
それに比べて嫉妬心と傲慢な気持ちを抑え切れない情け無い自分。

七条さんはよく俺のことを真っ直ぐで素直だと言うけれどそんな事は無い。
醜い自分の心。そんな気持ちが嫌で俺はつい返事をしてしまっていた。

「いいですよ。渡すだけなら。でも本当にお返事は出来ないかも知れませんけどいいですか?」

「はい。私がこういう気持ちでいるって事をわかって欲しいだけなんです。お願いします。」

彼女の顔がパッと明るくなった。
キレイだな、と思った。特に美人ってわけではないけどキラキラしていた。
とりあえず手紙だけ預かって、それじゃあと背を向けると

「伊藤さん。」

と呼び止められた。

「なんですか?」

振り返ると彼女が晴れやかに笑う。

「いい方ですね。伊藤さんって・・・ありがとうございます。」

そう言うと俺の返事も待たずに彼女は走っていった。
俺はなんとも言えない気持ちでその背中を見送った。


すみません。ちっとも間に合ってません。
思ったより長い話になりそうでして・・・
まだ臣さん出てきてもいないですからね
あれ〜おかしいな〜Xmasの話の筈なのに・・・