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俺は目を覚ますと古ぼけた館の中でポツンと俺だけがベッドで寝かされていた。
そのベッドだけがこの館の中で真新しくて、どこか違和感を感じていた。

「俺・・」

ぐるぐるする頭の中で今までなにが起こっていたのかを反芻する。
そう、確か臣さんと空中遊泳して、それから・・。

「臣さん!!」

俺は慌てて起き上がり、館中を探した。
しかしどこにも臣さんの姿はなかった。

「臣さん・・・」

外はすっかり日が暮れていて、明かりのない館は薄暗くなった。
俺は呆然としながら館を出ると、館の姿は跡形もなく消えていた。


家に戻り、どこに泊まったのかとうるさく言うお母さんに返事もしないまま、
自分の部屋に入り、ベッドに横になった。臣さんはどこに行ってしまったのだろう。
もしかすると今までのことは全て夢だったのではと錯覚させられるとこだった。
臣さんのことを考えながらも疲れていたのか、俺は夕飯も食べないまま眠ってしまった。

・・・けい・・た・・くん・・・・
・・・・啓太くん・・・・

臣さん!!俺は夢の中で必死になって臣さんを追いかける。
だけど臣さんは寂しげな笑顔をうかべながらどんどん遠ざかっていく・・。

・・・・ごめんなさい、啓太くん・・
・・・・本当なら君の記憶も消さなければならなかったのに・・
・・・・いや、他の誰でもなく、君の記憶だけは消してあげなければ
・・・・ならなかったのに・・・・
・・・・僕のわがままです。
ごめんなさい、啓太くん・・・・

泣かないで臣さん、約束したじゃないか、もううれし涙以外は流さないって。
どうして俺はあのときちゃんと臣さんの思いに答えてあげなかったのだろうか。





目を覚ますと俺は泣いていた。

「臣さん・・」

俺はいてもたってもいられなくなって、まず荷物をまとめた。
それからありったけの現金と寝袋と地図。そして手紙を書いた。

「母さん、俺これから出かけてくる」

「これからって、もう夜中よ」

母さんが驚くのも無理はない、だってもう11時を回っていたから。

「うん、あと少しで夏休みも終わるし、 ちょっと一人旅でもしようかなって」

「一人旅って・・ちょっと啓太・・」

ごめん、母さん。今すぐ臣さんを探しに行かなくちゃいけないんだ。

そのまま家を出て俺はこれからどこに向かおうとしているのだろうか。
とりあえずあの館に行ってみた。
しかし館はあとかたもなく消えていた。

「臣さん・・」

落ち着け、臣さんと楽しく話した内容を思い出すんだ。
あの空中遊泳のときだって・・。

「もしかしたら・・」


「ご主人様、僕はこんなにも啓太くんを愛してしまいました。
人を愛するという気持ちを感じたのは初めてです。
でも僕の存在そのものが啓太くんの邪魔になってしまう・・。
どうすればいいのでしょうか?」

俺が臣さんの姿を見つけたのは、臣さんがお墓の前で話をしている姿だった。

「やっぱり・・」

臣さんは西園寺という人のお墓で両膝をついて、まるで懺悔しているように話しかけていた。

俺はさっき臣さんと空中遊泳していたときに、
あの大きな木のふもとにあるのがご主人様のお墓だって話してくれた。
そして今度、一緒にお墓参りしましょうねと俺に言ってくれていた。

だから、なんとなく今、臣さんがいるのはここじゃないかとそう思って
やっとの思いでここを探しだした。

そして、今臣さんがここで泣いていた。

「臣さん・・」

「啓太くん!!どうしてここが、わかったのですか?」

「臣さんが、俺にここがご主人様のお墓だって話をしてくれたから、
もしかして・・と思って」

 すると臣さんはふっと笑って

「一体、何をしに来たのですか?」

 ちょっと冷たい声。
どうしてそんな風に言うんですか・・。

「俺は、臣さんを探しに来たんです。
だってもうあの館は跡形もなく消えていたから・・」

「そうです、もうあの館には戻るつもりはありませんから」

きっぱりと臣さんは言う。

「でも、それじゃあ臣さんはこれからどこに行くのですか?」

「それは、啓太くんには関係ありません」

・・俺は二の句が告げなかった。
でもここでひるんでいたら、またさっきと同じことになる。
臣さんは俺のことを思って必死に冷たいことを言っているんだ。
今度は俺が臣さんのことを考えてあげる番なのだと・・。

「関係なくなんてありません!!」

「啓太くん・・」

「俺は家を出てきました。
もし臣さんがここにいなかったら、臣さんを探し出すまで帰らないつもりだったから。
ううん違う。
どっちみち臣さんを見つけたら
このまま俺を二人だけしか知らないどこかへ連れて行ってもらうつもりで
置手紙をしてきたんだから」

「啓太くん、それは」

「はい、臣さんと駆け落ちしようと思って、あの・・ダメですか」

 ああ、どうして最後まで俺って男らしくはっきり言わないんだろうか・・。
でも臣さんは俺をギュッと抱きしめた。

「あなたはバカです。
ずっと光の中でいられたものを、僕なんかを選らんでしまって・・」

「確かに俺はバカですけど、愛する人を間違えるほどバカじゃありませんよ。
さっきどうしてすぐに臣さんの手を取らなかったのか、
死ぬほど後悔したんですから、
もう絶対この手は離しません。
臣さんがイヤだって言ったって俺は死ぬまで臣さんの側をはなれませんからね。
臣さんが俺を置いていったら、見つけるまで探し出します。
たとえお爺さんになっても・・
あっでも俺がお爺さんになったら臣さんは相手にしてくれないですかね」

「まったく。君って人は・・」

「臣さん」

「まったく君って人は。
せっかく人が一大決心した気持ちをこんなに簡単に覆してしまうなんて・・。
まったく君には叶いません」

臣さんは俺を抱きしめていた腕をほどいてにっこりと笑った。

「あの・・俺・・」

「愛しています、啓太くん。
本当に僕でいいんですか?僕は化け物ですよ」

「違いますよ、臣さんがいいんです。
臣さんが化け物かどうかなんて俺には関係ありません。
俺も臣さんを心から愛しています」

「では、この僕とどこまでも。
もしかするとずっと闇の世界にいるかもしれなくても・・」

「構いません。
それよりも臣さんがいない世界のほうが俺にとっては暗闇です」

「ああ、こんな奇跡というのがあるのですね。
ご主人様、ご紹介します。
これが僕の愛する人。
伊藤啓太くんです」

 臣さんは俺をご主人様に紹介してくれたので、俺はお墓の前で挨拶をした。

「初めまして、俺伊藤啓太といいます。
臣さんと知り合ってまだ日も浅いのですが、どうしようもなく臣さんを愛してしまいました。
ずっと臣さんの側にいたいと思っています。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げると臣さんは

「これから僕たちはご主人様のもう一つの館に行きたいと思います。
どうか、ずっと僕たちを見守っていてください」

「じゃあ臣さん」

「ええ、もう啓太くんがイヤと言っても離しません。
僕と生涯を共にしてください」

「ふふ。まるでプロポーズみたいですね」

「そうですよ、僕は啓太くんにプロポーズしているのです」

恥ずかしくもなく臣さんはそう言った。
俺も嬉しかったので

「はい、俺も一生臣さんと一緒にいます」

そう言って自分からキスをした。
臣さんの大事なご主人様の前で愛を誓う。
本当に結婚式みたいだった。

「では、ハネムーンをかねて出かけましょう。二人だけの大地へ」

臣さんは俺を抱き上げて一気に空に舞い上がった。


折りしも月はフルムーン。




「臣さん、愛しています」

「はい、僕も愛しています」

臣さんの目に光る涙はどの宝石よりも美しかった。
そして俺たちの姿は夜の中へ消えていった・・・。





FIN



シェリー様にこんな素敵なお話を頂いてしまいました。
シンマの書いた「In the Night」のもう一つのお話です。
シェリー様の七啓への愛が溢れてますね。
とても温かいお話をありがとうございました。