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「七条さん、今度の日曜日開いていますか?」
「今度の日曜・・ですか?」
「はい!!」
「いえ、特に用事はありませんが・・」
「なら、外で待ち合わせして出かけましょう」
「おや、デートのお誘いですか?嬉しいですね」
「え!えっと・・・」
「いい加減にしろ。啓太が困っているだろう」
「郁」「西園寺さん」

午後の会計室。
陽は暖かで、うたた寝でもしたくなるような陽気なっていた。


「もう、すっかり春ですね」
「ああ、そろそろ桜でも咲くんじゃないか?」
「日本ではお花見という習慣があるんですよね」
「ああ、家の桜もそろそろ咲くかな」
「西園寺さんの家にも桜があるんですか?」
「古い家だからな」
「そういえば、郁のおうちの桜はきれいでしたね」
「大抵は春休みになって咲くからな。私の方はそれに比べるとこっちは桜の開花が早いからな」
「そうですね」
「そうだ、臣」
「なんですか?郁」
「悪いが今から生徒会室へ行ってきてくれないか」
「どうかしましたか?」
「新年度の予算だが、私の出した数値と合っていない」
「それは困りましたね。では行ってきます」
「はい、七条さんいってらっしゃい」
七条は西園寺からファイルを受け取って会計室を出た。

「さて、啓太。邪魔もいなくなったし、何が聞きたいんだ?」
「すみません、西園寺さん。こんなこと頼んで」
「ほかならぬ啓太の頼みだ。言ってみろ」
「七条さんって、お花見とかしたことないんですか?」
「あれがそういうタイプに見えるか?私の家では毎年観桜会を行っているが、臣がそれに来たためしがない。
どうも臣は情緒とかそういうものがかけているからな」
西園寺も手厳しいことを言う。
それも幼馴染ゆえんだろうか・・・。

「西園寺さん・・・・」
「啓太は臣と花見がしたいのか?」
「はい、なんで七条さんの好きな食べ物ってなにかな?って」
「臣の好きな食べ物は偏っているぞ。
なにせ日本に来たばかりのころは、塔子さんも忙しかったからな。
お婆様の料理が食卓に上ったのだが、アメリカで育った臣にいきなりの和食は堪えたみたいで、
以来ジャンクフードばかり食べていたからな・・」
「じゃあ遠足とかのお弁当とかは?」
「私が余計に用意させていた。臣の口の合うものを選んでな」
「そんな・・・」
付き合ってまだ間もない啓太には、まだまだ七条のことを知らなかった。
「でも私が思うに啓太が用意したものなら臣は食べると思うぞ」
「そう、ですか」
「ああ」
優雅に笑う西園寺を見て啓太は(そうかもしれない)と思えてきた。

「わかりました。ありがとうございます西園寺さん」
「いや、別に構わない。それより啓太」
「はい。なんですか?」
「お茶を淹れてくれるか?」
「わかりました」
七条と正式に付き合うようになって、啓太の会計室にいる時間がさらに増えた。
ぼうっとしていることに慣れない啓太は積極的に会計の仕事を手伝うようになり、
最近では七条に変わってお茶を淹れることを西園寺から許されていた。

「おまえの淹れるお茶も、私は好きだ」
「そうですか?まだまだ七条さんほど、おいしく淹れられないんですけど」
「そんなことはないぞ。啓太の淹れるお茶もおいしい」
「ありがとうございます」
「二人で何をお話しているんですか?」
「臣」「七条さん!」
「ただいま戻りました。郁、数字の違いがわかりましたよ」
七条はファイルを西園寺に渡す。
西園寺はそのファイルを開けて中を確認すると
「やはりそうか。私の思ったとおりだな」
「まったく、あの人はご自分の間違いを素直に認めないので思ったより時間がかかってしましました」
ふぅとため息をついて、七条もソファーに座った。
「あ、今七条さんにもお茶、淹れますね」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます伊藤くん」
啓太はあらかじめ用意してあった七条のカップにお茶を注いだ。
「どうぞ」
「はい、ありがとうございます」
優雅なティータイムだった。



「さて、では帰るか。少し遅くなってしまったな」
「そうですね。では行きましょう」
3人は会計室を後にして、寮に戻った。


「遅かったな、いま帰りか?」
「篠宮さん・・・・」
「はい、部費の予算の詰めがありましたから、しばらくは遅くなりそうですね」
「そうか、七条たちも大変だな」
「生徒会の書類がもっと早く作成していれば問題ない」
「西園寺・・・。そうだな、ああもうすぐ夕飯の時間だからな。それと伊藤?」
「はい」
「例の・・ことだが・・」
「ああ・・。わかりました、今篠宮さん時間の方は大丈夫ですか?」
「構わないが」
「じゃあお願いします」
「そうか?では行こうか」
「はい、西園寺さん七条さんまた後で」
「ああ。啓太」
「伊藤くん?」
七条の問いにも答えずに啓太は篠宮と一緒に行ってしまった。立ち尽くす七条。
「どうした?臣。私は部屋に行くが。おまえはどうする」
「僕も部屋に戻りますが」
「ならば行くぞ」
「はい」
(伊藤くん、一体どうしたというのでしょうか・・・・)
少し戸惑う七条であった。

「あ、七条さん」
「伊藤くん、どうしたんですか?もうお遅いですよ」
「ちょっと・・へへ・・」
照れ笑いする啓太が愛おしくて、七条はすっぽりと抱いてしまった。
「し・七条・・さん?」
「君は本当にかわいいですね。君のそばにいると心が和みます」
「でも、ここ寮の廊下だから・・・」
「僕は誰に見られてもかまいませんよ」
さらに抱きしめてくる。

そんな七条をいとおしく思える啓太は
(まぁ・・・いいか・・・)
と目をつぶった。

「いけませんね。もうこんな時間です、明日も早いのでしょう?」
「はい。でも大丈夫ですよ。あっそうだ、日曜日ですけど、待ちあわせですが」
「はい、どこで何時に待ち合わせするのですか?」
「えっと、学園島を出たところの星見ヶ丘駅に10時でお願いします」
「同じ寮に住んでいるのに待ち合わせというのは、なんだか本格的なデートですね」
「あは、そうですね」
「わかりました、星見ヶ丘駅に10時ですね。わかりました。なんだか楽しみですね」
「はい、じゃあまた明日。おやすみなさい七条さん」
「おやすみなさい、伊藤くん」
二人はそれぞれの部屋に戻っていった。

「七条さん!!」
「伊藤くん。どうしたんですか?その荷物は?」
「いえ、じゃあ行きましょうか?」
「はい、でも切符は?」
「僕がもう買ってあります、はいこれは七条さんの分です」
「あ・ありがとうございます」
なんとなく勝手が違うことに戸惑いを感じる七条。でも啓太の笑顔にそんな思いも払拭されてしまった。
「では、伊藤くん。エスコートをお願いしますね」
「はい!!俺についてきてくださいね」
「でもその前にこの荷物は僕が持ちますよ」
「あ・いいですよ。そんなに重くないし」
「いえ、それでは手をつなげませんから」
すっと、啓太の荷物を取ってしまうと、その空いた手を繋いだ。
「し・七条さん・・」
「だってデートですからね」
軽くウインクされて、照れてしまう啓太。

それから2人は電車に乗った。




「ここ・・・・ですか?」
「はい!!」

七条が驚くのは当然だった。
それは大きな一本桜が咲いている公園?だった。
「でも誰もいませんね」
「はい、この場所実は和希から聞いたんです。ここの桜は穴場だって」
「そう、でしょうね」
そうここは鈴菱の私有地である旧:鈴菱邸だった。ここは許可がないと入れない場所だった。
(たいがいにあの人も伊藤くんには甘いですね)
七条は理事長の顔を思い浮かべながら苦笑をした。

「さぁ七条さん。お花見しましょう」
「お花見・・ですか?」
「はい!!」
啓太は桜の木の下にレジャーシートをしいた。
「あ、七条さん荷物貸してください」
「はい、どうぞ」
七条はシートの上に荷物を置くと啓太は所狭しとお弁当を広げた。
「さぁ座ってください」
「はい」
七条が座ると啓太はポットからお茶を注いだ。
「これは日本茶です。どうぞ」
「ありがとうございます」
日本茶を注がれたコップを受け取った。
その間に啓太はお弁当は開けたり、お皿を出したりしている。

「これは凄いですね」
「あ、でも味の保障はできませんよ。俺が作ったものですから」
「これを?全部?伊藤くんが?」
「はい・・・っていっても篠宮さんにいろいろと教えてもらっていたんですけど」
「ああ、それで・・:」
例の話とはそういうことだったのかと思った七条はクスリと笑ってしまった。
「七条さん?どうしたんですか?」
「いえ、伊藤くんが篠宮さんとなにか内緒ごとをしていたように見えたので、ちょっとだけ嫉妬していたんです」
「そうだったんですか?」
「はい、実は・・・」

何故かそんな他人には話せないような内容も啓太の心遣いがわかるとするすると口にできてしまう。

(やはり、僕には君が必要なんですね。こんな思いをいとも簡単に軽くさせてくれる)

「だって、内緒にして今日七条さんを驚かせたかったんです。
でも秘密にされるのってイヤですよね。ごめんなさい」
「いえ、君はいつも僕の思いつかない行動を取ってくれるので、ある意味とっても新鮮です。
そして僕にいろいろな感情を思い出させてくれます」
「あ、でも・・」
「せっかく伊藤くんが僕のためにお弁当を作ってくれたのですから、早くいただきましょう」
「あ、はい。七条さん、桜きれいですね」
「はい、こんな見事な一本桜はあまり見たことがないですね」
「そうですね。俺もこんな桜は初めてです。和希に聞いておいてよかった。
それにここ人がいないから、人の目を気にしなくてもいいし」
(ああ、君はそんなことまで考えてくれていたんですね。
でもこんな風に桜を見て、手作りのお弁当を食べるなんて、初めてです)

「何がいいですか?」
「本当にこれを全部、伊藤くんが作ったのですか?支度が大変だったのでは・・」
それもそのはず、なにせオニギリが三種類。海苔に巻いているのが鮭とおかか。
そしてゴマがまぶされたオニギリは中に梅が入っているらしい。
そしておかずは、鶏のから揚げ・桜麩を巻いた卵焼き・菜の花の胡麻和え・ひじき・ウインナーにポテトサラダにプチトマト。
彩りもバランスも考えられたメニューだった。
「あ、でも前の日から準備していたからそんなに大変でもなかったですよ。
それよりお手製のお弁当を持って七条さんとお花見したかったんです」
家庭の味をしらない七条にとって、手作りのお弁当も、日本ではわりと当たり前のお花見も新鮮以外になかった。


啓太からお皿にいろいろ乗せられたおかずを貰い、のんびりと桜を見てお弁当を食べる。
そんなことが嬉しくて仕方がなかった。
「おいしいですよ。とても」
「よかったぁ。じゃあ俺もいただきまぁす」
啓太もおいしそうに食べている。
そんな光景がいとしくていとしくて、たまらなかった。

「日本人がどうして桜の時期になるとお花見をするのか、少しわかりましたよ」
「そうですか?俺こんな風に七条さんとゆっくり桜見ながら、お花見したかったんですよ。よかった喜んでくれて」
そして啓太の作ったお弁当をすべて平らげてしまうと
「お天気もいいせいか、なんだか眠くなってしまいましたね」
「そうですか?ならよければ俺の膝を貸しますから横になったらどうですか?」
「いいんですか?伊藤くん」
「はい、どうぞ。って言っても男の俺にの膝じゃ硬いかもしれないけど」
人がいないせいか、いつもより啓太は大胆になっていた。
「いえ、ではお言葉に甘えて」
七条がごろりと横になって啓太の膝に頭を乗せた。


「あ、寝ちゃいましたね・・・」
いつの間にか眠ってしまった七条の髪をすきながら、啓太は桜を見た。
桜は風に揺られて花びらを散らしていた。
「なぁ〜んかいいなぁ・・・。こういうの。まさか七条さんが寝るなんて思わなかったけど。喜んでくれたみたいでよかった」
端整な顔立ちの七条の寝顔を見ながら、啓太も少しうとうとしてしまった。




「伊藤くん、伊藤くん」
「うん・・・・な・・・に・・・」
「そろそろ起きないと、風が寒くなってきましたよ」
「あ・・・」
気がつくと陽はだいぶ翳ってきていて、啓太は横になって眠っていた。
「僕が目を覚ましたら伊藤くんも眠っていたので横になってもらいました。
準備であまり寝ていなかったのではないですか?よく眠っていましたよ」
「あ、七条さんの上着・・すみません寒くなかったですか?」
啓太には七条が着ていた上着をかけられていた。
「いえ、その代わり伊藤くんの寝顔をたくさん見れましたので」
「あはは・・・。そうですね。そろそろ帰りましょうか?でも何にもしませんでしたね」
「でもこういうのが、お花見でしょう。とても楽しかったですよ。桜もきれいでしたし」
「よかった。では寮に戻りましょうか」
「はい、ではここを片付けましょうね」
てきぱきと七条が片付けてしまった。


「このお礼をしなくてはいけませんね。とてもステキなデートをありがとうございます」
「いえ、そんなお礼なんていいですよ。俺がやりたかったことですし」
「こんな休日もいいですね」
「はい、まぁ夜桜っていうのもキレイですけど。俺は光の中で見る桜の方がいいですね」
「夜桜ですか。では来年は桜の見えるレストランで食事とかホテルから見える桜とかもいいでしょうね」
「ああ、それはいいかも」
「では来年もまたお花見しましょう」
「はい、七条さん」

そして2人は手を繋ぎながら、寮に戻っていった。





FIN



シェリー様のBLOGの5555というキリ番を踏ませて頂きました。
なんとラッキーな事か。
シンマのお花見話をお願いしますという鼻息荒いリク(笑)に
こんな素敵なSSを頂きました。
うは〜。幸せです。
シェリー様のBLOGへはリンクページからどうぞ。
七啓・キチメガ・オリジナル等沢山手がけていらっしゃいますよ。
本当にありがとうございました。