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「チッなんだよ。発信機でもついてんのか?」

近づいてくる足音を聞きながら丹羽は舌打ちをする。
絶対に聞き間違えようのない聞きなれた足音。

当然のようにこの部屋の前で止まる。
軽いノックが聞こえ、それでも返事をしないでいると勝手にノブが回る。

「ここにいたか?今回ばかりはちょっと意外だったな。」

「うるせーな。勝手に入ってくんなよ。俺は怒ってるんだぜ!」

「何が気に食わないんだ。哲也。まったくお前は子供だな。」

シルバーフレームの眼鏡のブリッジに手を掛け軽く掛け直しながら中嶋がつぶやく。

「だいたいなんで俺がここにいるってわかるんだよ。発信機でもついてんのか?」

と丹羽は自分の制服のポケットを確かめる。

「ふっ。そんなわけないだろう。
だが今日ばかりはさすがの俺も時間がかかったぞ。まさか寮の自室にいるとはな。」

確かにいつも丹羽がサボるときは学内がほとんどだ。
もちろん最後には戻るつもりだからこそ寮まで帰ってしまうとめんどくさいからだ。

だが今日は学生会室へは帰らないつもりだったので寮まで帰りさらに部屋の電気まで消していたのだ。
それなのに中嶋は自分を見つける。
どうしていつも見つかるのか?と丹羽は首をひねる。

「ヒデッ大体お前なんだよ。俺は怒ってるって言ってるだろう。さっさと出てけよ!」

あるはずのない発信機を探してズボンのポケットを探りながら不機嫌そうに丹羽が告げる。
電気を消した部屋の中ゆっくりと丹羽に近づく中嶋の眼鏡が月明かりを受けキラリと反射する。

「何だ哲也。何を拗ねてるんだ。それともこんな暗がりで誘っているのか?」

「バ・・ッカ野郎。俺は真面目な話をしてるんだろうが。どうして俺に何もいわねえ。」

一瞬丹羽の顔に朱が散る。しかしすぐに大きく頭を振り言葉を続ける。

「どうしてだよ。ヒデッ。何で俺に進路をいわねえ。隠す必要なんてねえだろ?」

そう。丹羽がめずらしく真面目に学生会室でしていた仕事を放り出し、
寮で不貞寝する事になった原因がこれだ。

何度聞いても中嶋は”決まっていない”としか答えない。

生まれた時から人生プランがあるんじゃないか?と思うほど先の見通しに厳しい中嶋が
自分が進む道をこの時期に決めていないなどありえないと丹羽は思う。

だからこそ隠されているんだと落ち込んでいる。

そんな様子の丹羽に‘ふっ‘と硬質な笑みを落とした中嶋は
片手で器用に眼鏡をたたみポケットにしまうともう片方の手でベッドに座る丹羽の顎を持ち上げる。
驚いた顔で見上げる丹羽を無視してその唇にふれるだけのキスをする。

「まったくお前はどうして最後まで話を聞かない?
俺はまだ決めていないとしか言っていないだろうが。哲っちゃん。」

少し意地の悪い笑顔を向け呆けた顔の丹羽を見やる。

「どういう事だよ。俺、お前と同じ大学に行けたらと思って聞いたんだぜ?」

丹羽は困惑顔だ。決まっていないということは決めてないって事だろ?

「俺もそう思って決めていないんだ。
お前が目指すとなればT大、W大、H大、ぐらいだろう。K大はお前のカラーじゃないしな。
その3つならどこにでも法学部はあるからな。」

とっておきの種明かしをしてやる。
子供のように目を輝かせて喜ぶ様子を堪能する。
そしてそれがだんだん怒りに変わってくるのが見て取れる。まったく退屈しない。

「てめぇヒデ!なんでちゃんとそういう事いわねぇんだよ。俺心配したんだぜ。」

真っ直ぐな丹羽。そんなお前をこの俺が逃がすと思うのか?
心の中でつぶやきつつ、座ったままの丹羽の肩を押す。

ふいうちでベッドに転がった丹羽の上にのしかかると静かに告げる。

「俺を信じていないからだ。やっぱりお前にはまだお仕置きが必要のようだな?」

「おっ・・おいヒデやめろって・・・」

やっぱり俺同じ大学は辞めたほうがいいかも?心の中で丹羽は叫ぶ。

でもまあいいか。お前の足音なら俺絶対聞き間違えないし・・・
なんせ3年間俺だけをずっと追ってきてくれる足音だから・・・




FIN


丹羽君お誕生日企画の時書いたSSです。
甘い中嶋になっちゃいました。(汗)